実は私は、理系院卒でして(プロフィールにも書いています。)その知識を活かし、身近なものの専門的な話も記事にしていきます。
今回は、扇風機についてです。夏なら毎日使っている扇風機の強さを変えることで何が変わっているのか説明します。
※2018.09.02:ダンパ制御の記載を一部変更しました。
1. そもそも扇風機は「送風機」のひとつ
みなさんの家にある扇風機は機械の種類で言うと、「送風機」に分類されます。
送風機とは、
空気やほかの気体に圧力を与えて送り出す装置。風量,風圧,用途などにより種々の機種があり,ターボ形の軸流式,遠心式,容積形の回転式に大別される。
ターボ型だと主に3種類あります。

絵からわかるとおり、扇風機は「軸流式」に分類されます。
産業用では、下の写真のような遠心式ターボファンがよく使われます。

2. 送風機の状態は「性能曲線」でわかる
送風機の状態を把握するためには、「性能曲線」を知ることが必須です。
性能曲線とは下に示す「風量と風圧」のグラフです。
送風機の種類によって形が代わりますが、おおよそこのような形をしています。

送風機の運転ポイントは、空気を送る配管等による抵抗と風圧が一致するところになります。
通常、送風機の前後は配管でつながっており、決まった場所から空気を吸込み、使用先まで配管を通じて空気を送ります。

ここでいう、抵抗とは空気などの流体を配管を使って流すときに発生するものです。
(※ストローを加えて息を吐くときを想像してください。太いものより細いものの方が吹きにくい=抵抗が大きかったり、先が曲がっていたり、細くなっているとさらに抵抗は増えます。)
また、抵抗には2種類あり、風量によって変化するものと一定のものです。
配管の抵抗は、風量の2乗に比例するので、風量によって変化する抵抗です。
一方、使用先がタンクで圧力が高かったりすると、そこに空気を押し込まないと行けないので、常に一定の抵抗があると考えられます。
この2種類の抵抗を足し合わせたものを性能曲線では考えます。

実際に、送風機を選定する際は、必要な風量・風圧を別途計算で求め、上記の運転ポイントを決めます。(風圧はダクト等の抵抗を考慮して算出)
送風機のよくある制御パターンとしては、①ダンパにより流量を制御と②インバーターによる回転数制御があります。
ここから先は少し専門的なので、結果まで飛ばしたい人は2.2まで進んでください。
2.1 ダンパによる流量制御
送風機の吸込み側、吐出し側のどちらにダンパを取り付けるかで2パターンあります。
1)吐出し側にダンパを取り付ける場合
吐出し側にダンパを取り付け、開度を絞る(塞ぐ側に動かす)と、吐出し側の抵抗が増えます。すると抵抗が増加することにより、送風機の性能曲線との交点が下のように変化するので、風量は減少し、風圧は増加します。
このとき、動力は、運転ポイントが左に動くので下がります。
逆に、ダンパの開度を大きくした場合、抵抗は減るので、風量は増加し、風圧は減少し、動力は増えます。
一般的に吐出し側のダンパによる制御は、動力曲線が変化しないので、吸込み側にダンパを設置する下記パターンと比較すると、動力的には最も不経済な方法です。

2)吸込み側にダンパを取り付ける場合

送風機入口側にダンパを取り付けた場合、下の図のように、圧力曲線、動力曲線ともに変化します。これは、入口ダンパを絞ることで送風機入口圧力が減少するので、圧力曲線は下がっていきます。動力曲線に関しても、送風機入口に負圧が生じるので、吸込み空気の比重量が減る(軽くなる)ので動力も下がるのです。
この、吸込み側にダンパを設置する制御方式だと、動力曲線も変化するので、動力的に省エネであると言える。
また、この方式は別の記事で紹介しているサージングと呼ばれる異常運転状態への対策としても有効です。

2.2 インバーターによる回転数制御

インバーターによりモーターの回転数を増加させる場合、流量・圧力は増えるので、
下のように性能曲線が変化し、新しい運転ポイントに移動します。

おまたせしました!笑
この回転数が変化することにより風量・風圧が変化するのが扇風機で強弱を替えているときの状態です。
つまり、
・扇風機で「中→強」で回転数増加 → 性能曲線が上に変化 → 風量・風圧が増加
・扇風機で「中→弱」で回転数減少 → 性能曲線が下に変化 → 風量・風圧が減少
となっているのです。
実際普段、扇風機を使用する際も、弱と比べたら強にしたら風の勢い(風圧)が強くなり、風量も増えていると実感しますよね。
3. まとめ
〜扇風機も奥が深いです〜
[…] 前回記事でご紹介した、入口ダンパ開度を絞るなどの吸込み側を絞ることでサージング点は左に移動します。 […]