2018年2月16日に日本で6施設目となる重粒子線によるガン治療を行う「大阪重粒子線センター」の内部が、3月1日からの営業開始に先駆けて報道陣に公開されました。
いきなり重粒子線によるがん治療と言われてもまったくピンとこないし、興味もわかないですよね??笑
私も全く興味なかったんですけで、先日の記事で紹介したインベスターZの19巻中で、「重粒子線によるがん治療」がテーマとして出てきていたので気になって記事にしてみました。
重粒子線治療はかなり将来性があり、日本が世界でリードしている超注目の分野なのです。
目次
1. 重粒子線治療はこんなにすごい
1.1 がんの治療方法は「外科療法」「化学療法」「放射線療法」の3つ

がん治療には3つの手法があります。
「外科療法」 ・・・手術でがん細胞を取り出す
→標準治療、身体への負荷が大きい、入院必要
「化学療法」 ・・・薬でがん細胞の増殖を抑える
→血液系のがんへ有効、全身へ副作用が出る可能性あり
「放射線療法」・・・放射線の部分照射でがん細胞を攻撃する
→体への負担すくない、局所の副作用が出る可能性あり
それぞれ特徴があり、がん治療では症状によって治療方法を組み合わせます。この中で、重粒子線治療は放射線療法に分類されます。体への負担がすくない治療法で技術発展とともに注目されている分野です。
1.2 重粒子線治療のメリット・デメリット
それでは、放射線治療の中でも重粒子線治療が今注目されている理由を説明します。
一番の理由は、他の治療 比べて体への負担が極端に少ないのに効果は大きいところです。
これは、重粒子線治療で扱う「重粒子」の特徴に起因します。

出典:大阪重粒子線センター | Osaka Heavy Ion Therapy Center
重粒子の説明はこんな感じで書かれています。
従来のエックス線、ガンマ線は質量がゼロですが、粒子線(陽子線、重粒子線等)には質量があります。重粒子線はその質量が陽子線の12倍と重いため、エックス線や陽子線に比べて生物学的効果(がんを殺す効果)が2倍から3倍高いと言われています。
つまり、重粒子線は今までよりも重いので、その分効果が大きいのです。
また、陽子線による治療方法もありますが、重粒子線の方が質量があり約3倍の効果があります。
さらに、質量の違いだけでなく、放射線としての特徴も従来と異なります。

従来の放射線治療では、ガンマ線・エックス線を使っていまいたが、機械から照射し、体の表面で一番パワーがあり、体の中へ行くほどパワーが弱まっていました。そのため、がん細胞周辺への副作用が大きかったです。
一方、重粒子線は、機械から照射後一定の深さまで入ったときに一番パワーを発揮します。つまり、がん細胞がある部分だけパワーを発揮させることができるのです。そのため、副作用が少なく、体への負担が少ない治療と言われています。
実際、大阪重粒子センターには入院施設がありません。一回の治療時間も30分程度と短く、最短で1日、平均3週間の治療で終了するそうです。
がんの治療がこんなに手軽にすぐ終わるなんて驚きですよね。他にも、骨肉腫などの従来技術では治療が難しかった難治性のがんへの治療も可能などメリットが多い治療方法です。
1.3 治療は約300万で受けれる
効果がすごいのはわかったけど、気になるのは費用ですよね。
重粒子線治療ガイドによると300万ほどで治療を受けれるそうです。実際には、これに保険適用部分(入院費、診察代など)が追加でかかります。インベスターZ中では314万でできると記載があります。
重粒子線治療は先進医療として認められているため、混合診療が可能です。そのため、重粒子線治療費用約300万円(自己負担。(治療費は各施設のホームページをご覧ください))に加えて、通常の治療と共通する保険診療部分(診察、検査、入院、薬など)の3割負担が必要になります。これらの保険診療部分の費用は、確定申告での医療費控除の対象であり、一定金額を超えた場合は高額医療費制度の適用となります。

出典:大阪重粒子線センター | Osaka Heavy Ion Therapy Center
徐々に保険適用範囲は広がっていますが、基本的には先進医療となり、重粒子線による治療部分は全額自己負担となっているようです。
治療費が高い理由は施設の建設に1機約150億の費用がかかるかららしいです。
2. 世界で10機のうち日本が5機を占めている

上の図は世界での粒子線治療施設の位置が示してあります。重粒子線施設は世界で10機のうち、日本は半分の5機を保有しています。この記事の冒頭で紹介した大阪重粒子センターを入れると6機になり、圧倒的に日本が世界にリードしていることがわかります。
日本がリードしている理由は、重粒子線技術の発祥であるアメリカが1990年台に撤退し、陽子線治療に軸足を移したからです。理由は、画像診断技術がまだ未熟だったから。日本は、地道に研究を続け、画像診断技術の進歩によって今の治療効果までたどり着いたのです。
ただ、うかうかしていられません。世界では、重粒子線治療が注目されており、今後5年〜10年で施設数が倍増しそうです。
3. 日本で作っているのは主に三菱電機、日立製作所、東芝の3社

日本の重粒子線治療装置メーカーは主に三菱電機、日立製作所、東芝の3社です。
納入実績では、三菱電機が他者を一歩リードしている形ですが、最近、東芝が増えいます。
ちなみに、2018年4月に三菱電機は日立製作所へ事業譲渡をするそうです。
なので、現在は日立製作所と東芝の2社が主な国内メーカーとなります。
3.1 日立製作所(三菱電機)
日立製作所は世界14施設で粒子線治療装置(陽子線)を受注しており、海外での実績はすでに十分あります。そこに日本でのシェアトップの三菱電機の事業が加わることで、世界トップシェアのIBA(Ion Beam Applications S.A.)についで、世界シェアNo.2になると言われています。
重粒子線の治療装置だけでなく、CTやMRIなど包括的なソリューションを提供できる強みがあり、今後の成長に期待したいです。
3.2 東芝
360°ガントリーを600トンから300トンへ超電導技術で小型化成功し、山形大学医学部付属病院の敷地に建設中の重粒子線治療施設で建設中です。
世界初・超伝導技術を用いた重粒子線回転ガントリー:特集・トピックス:粒子線治療装置 | 東芝エネルギーシステムズ株式会社
HPでも重粒子線を積極的にPRしています。
不正会計問題に揺れていても、粒子線治療の事業は売却しておらず、技術的に原子力事業で培った技術力を活かせる分野であり、今後も力を入れていくと思われます。
また、2015年に陽子線がん治療システムメーカーとして世界シェア50%以上で世界No.1のIBA(Ion Beam Applications S.A.)と協力関係を構築することに合意しています。IBAの陽子線治療システムの国内販売・保守を東芝が行い、IBAが東芝の重粒子線治療システムの海外展開に協力するという内容です。
世界トップの陽子線治療装置メーカーとタッグを組んでいるので、今後の海外での拡販に期待したいですね。
4. まとめ
重粒子線治療は日本がトップ!みんなで応援しましょう!
今後の成長が期待できる重粒子線治療について説明しました。みんなが重粒子線に興味を持ち、関連企業への投資することで日本が世界にリードする技術を応援したいですね。

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