【簡単解説】S造とは?W造、RC造、SRC造との違いと3つの特徴を解説!

世の中にはマンションや高層ビル、タワー、橋など非常に多くの建築構造物があり、あなたの一日の生活は、常に何かしらの建築構造物に囲まれているでしょう。

建築構造物は、世の中に溢れかえっていますが、基本的な構造はW造(木造)、S造(鉄骨造)、RC造(鉄筋コンクリート造)SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)の4種類しかありません。

この記事では、4種類の建築構造物のうち、大型の建築物や工場などで一般的に採用されるS造(鉄骨造)について、他の構造との違いや特徴について説明します。

あなたが自分の住む家のタイプを検討していたり、仕事で建築構造物の基本的特徴を知りたい場合に役立つ内容だと思います。

 

S造とは4大建築構造の1つ

S造(鉄骨造)の説明のまえに、まずは4大建築構造について簡単に説明しておきます。

4大建築構造とは

4大建築構造とは、以下の4つのことです。

W造(木造)
S造(鉄骨造)
RC造(鉄筋コンクリート造)
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)

それぞれの構造の概要を順番に説明してきます。

W造(木造)

W造(木造)とは、木材を使った建築構造のことです。

日本古来の特徴ある構造で、東大寺など歴史的な建造物もすべて木造です。また、日本の一軒家の多くは木造の場合が多いです。もしかしたら、あなたが住んでいる家も木造かもしれません。

W造(木造)のメリット・デメリット

メリット

・軽いわりには強度がある!
・短期間で建設可能!
コストが安い! → 賃料も安い!

デメリット

・燃える!腐る!虫に食われる!
・壁が薄く、遮音性が低い(音が聞こえやすい

 

S造(鉄骨造)

S造(鉄骨造)とは、鉄骨を使った建築構造のことです。

鉄骨と言われても馴染みがない人はピンと来ないかもしれませんが、上の写真に示すようなH形鋼やコラムと呼ばれる金属で出来た鋼材です。

S造(鉄骨造)による建築物は、18世紀後半より作られ始めました。世界初の鉄骨造の建造物はイギリスのアイアンブリッジと呼ばれる橋です。他にも、フランスのパリにあるエッフェル塔もS造(鉄骨造)の建造物になります。

S造(鉄骨造) のメリット・デメリット

メリット

・強度が強い!
短期間で建設可能!(工場で部材を製造可能)
・大きなスパンに耐えることができる!(大空間を作れる)
・RC造よりコストが低い!(W造よりは高い)

デメリット

・耐火性が低く、温度が上がると強度が下がる(500℃で半分の強度)
・壁が薄く、遮音性が低い(音が聞こえやすい

 

RC造(鉄筋コンクリート造)

RC造(鉄筋コンクリート造)とは、鉄筋とコンクリートを使った建築構造のことです。

コンクリート打ちっぱなしのおしゃれな部屋は基本的にRC造です。比較的低層〜中層のマンションに多く見られる構造です。

RC造(鉄筋コンクリート造) のメリット・デメリット

メリット

・耐火性、遮音性が高い(燃えにくく、音も響きにくい
・耐震性が高い(地震に強い)
・対腐朽性が高い(腐らない)

デメリット

・重い(多量のコンクリートを使う)
・建設に時間がかかる(工場で作れない)
コストが高い
熱が伝わりやすい
・硬いからひび割れしやすい

 

SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)

SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)とは、鉄骨・鉄筋とコンクリートを使った建築構造のことです。S造(鉄骨造)とRC造(鉄筋コンクリート造)を合体させた建築構造のイメージです。

RC造(鉄筋コンクリート造)の強度の強さと、S造(鉄骨造)の粘り強さを兼ね備えた、耐久性の高い建築構造です。そのため、高層ビルや高層マンションに使用されます。例えば、東京の六本木ヒルズでもSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)は採用されています。

実際には、建物全体がSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)ではなく、低層階はSRC造で中層〜上層はS造やRC造が採用されたりと、さまざまな構造を組み合わせて設計されています。

SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート) のメリット・デメリット

メリット

・耐火性、遮音性が高い(燃えにくく、音も響きにくい)
耐震性が高い(RC造の強度とS造の粘り強さを兼ね備える)

デメリット

・とても重い
・建設にかなり時間がかかる
コストがかなり高い
熱が伝わりやすい
・硬いからひび割れしやすい

 

ここまで説明した4つの建築構造の違いを表にまとめました。

最近は、高強度のコンクリートが実用化されているので比較的高層の建築物でもRC造で設計されています。

あたなが住む家を探している場合は、遮音性や耐久性に注目しましょう。

W造(木造)やS造(鉄骨造)と比較して、RC造(鉄筋コンクリート造)やSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)は遮音性が高く、強度が高いです。なので、隣の部屋の音を気にしたくなかったり、地震が心配だから安心出来る部屋に住みたいならおすすめです。その分、建設にコストがかかっているので、家賃は高くなる傾向があります。

住みやすさ・安心を取るのか、値段を取るのかはあなたの優先順位次第ですね。

 

S造の具体的な特徴とは(メリット・デメリット)

4つの建築構造の違いや特徴をざっくりと理解した上で、さらに具体的なS造(鉄骨造)の特徴を解説してきます。

S造は大きな建造物に最適

S造(鉄骨造)は大きな建造物に向いている建築構造です。なぜなら、強度が強いので建物全体の重量を減らせることが出来るからです。

上のグラフをご覧ください。

鉄(鋼)の圧縮強度は400MPa、コンクリートの圧縮強度は21MPaと鉄(鋼)の方が20倍強いのです。つまり、鉄はコンクリートの1/20の重量で必要な強度を出すことが出来ます。

大きな建造物の場合、建物の基礎や低層階に非常に大きな荷重が作用するため、建物全体の重量を下げることが重要です。

鉄の比重はコンクリートの3倍ありますが、少ない重量で強度を確保出来るため、結果として建物が軽くなり、大きな建造物や大空間を構成することが出来るのです。

例えば、パリのエッフェル塔やアメリカの自由の女神などの大型建造物もS造(鉄骨造)です。

あなたの身近にある大型な建築物をよく見てみると、S造(鉄骨造)かもしれませんね。

 

S造は短期間で建設でき、コスパがいい

S造(鉄骨造)は、RC造(鉄筋コンクリート造)やSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)と比べて、短期間で建設でき、コスパがいいと言われます。

主な理由は2つあります。

1つ目は、S造(鉄骨造)は使用する材料が少なくて済むからです。

先程説明したように、S造(鉄骨造)で使用する鉄(鋼)は、RC造(コンクリート造)やSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)で使用するコンクリートより20倍強度が高いので、建物全体で使用使用する材料が少なく済みます。

2つ目は、S造(鉄骨造)は現地での組立が簡単で工事費を抑えやすいからです。

RC造(鉄筋コンクリート造)やSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)の場合は、①現場で鉄筋を配筋して、②型枠を組んで、③コンクリートを流し込んで、④コンクリートが固まるのを待って、⑤型枠を外して、⑥コンクリートの表面を仕上げる必要があります。

一方、S造(鉄骨造)の場合は、①工場で輸送できる程度のサイズまで部材を製作し、②現地で柱の立ち等を調整しボルトで固定する必要があります。

明らかにS造(鉄骨造)の方が、現場での作業量が少ないことが分かると思います。

コンクリートの場合は、固まって強度が出るまでに1ヶ月程度必要ですが、鉄骨の場合はボルトで締め付けていくので圧倒的に作業スピードが早い特徴があります。

現地での工事期間=コストなので、現地で簡単に短期間で建設出来るほど、安く建設出出来ると言えます。

S造(鉄骨造)を組み立てる場合のボルトによる接続方法は主に剛接合、ピン接合の2種類あり、使用するボルトは高力ボルトと呼ばれる締め付け力の高いボルトです。よくハイテンと呼ばれたりします。

剛接合は柱と柱を繋ぐ大梁に使用されることが多い接合方法です。梁のフランジ・ウェブそれぞれをスプライスプレートと呼ばれる板を用いて高力ボルトで接続します。剛接合をした場合、基本的に強度としては1体ものと同じと考えます。輸送上のサイズを考慮して鉄骨自体は分割されていますが、剛接合をすることで1つの構造体として組み立てることが出来るのです。

一方、ピン接合は主に梁と梁を繋ぐ小梁に使用される接合方法です。ピン接合の場合は、接合部で回転することが出来るとみなします。回転といってもぐるぐる回るわけではなく、ピン接合部に回転力が加わったときに動くことができるので、回転による作用する力が緩和されるようなイメージです。

 

S造の弱点は火と水

S造(鉄骨造)には、火と水に弱いという弱点があります。

まずは、こちらのグラフをご覧ください。

S造(鉄骨造)で使用される鉄(鋼)は、温度が上昇すると強度が下がる性質があり、常温と比較すると500℃で強度が半分になります。

そのため、建物で火災が起きると、建物を支えている鉄骨の強度が下がり非常に危険です。そこで、鉄骨を火災から守るための耐火被覆というものがあります。

耐火被覆は2種類あり、鉄骨に巻きつけるタイプと吹き付けるタイプが存在します。

鉄骨に巻きつけるタイプはニチアス㈱のマキベエが有名です。鉄骨に巻きつけるだけなので手軽に作業できます。一方吹付けタイプは、細かい耐火被覆が空気中に待ってしまうので、作業環境に注意が必要です。

このように鉄骨の表面に、燃えにくいものを巻くことで、万が一火災が発生しても鉄骨を守ってくれます。

また、鉄骨は水にも弱いです。

あなたもイメージできると思いますが、鉄は濡れると赤くなり錆びてしまいます。錆が進行すると、どんどん鉄骨が薄くなり、強度が低下します。

そこで、錆防止のために鉄骨表面は錆止めと呼ばれる塗装をする場合が多いです。通常、赤色が多いです。錆止め塗装をすることで、水に濡れても錆びにくくなります。

ただ、この塗装をしていても、水を撒く床日常的に水がかかる場合は錆びてしまいます。

なので一般的には、柱の根元など水に濡れやすい場所は根巻きと呼ばれるコンクリートで囲います。コンクリートはアルカリ性なので、コンクリート中の鉄は錆びにくくなり、水も直接触れなくなるので錆びを防止してくれます。この性質は、RC造(鉄筋コンクリート造)でも同じですね。

RC造(鉄筋コンクリート造についてまとめた記事はこちら

【簡単解説】RC造とは?W造、S造、SRC造との違いと5つの特徴を解説!

 

S造建築の床・壁構造とは

S造(鉄骨造)では、鉄骨によって主な骨格を構成しますが、鉄骨にどのように床や壁を作るかは想像しにくいと思います。

そこで、S造(鉄骨造)の床・壁構造について簡単に説明しておきます。

S造の床構造

S造(鉄骨造)の床構造は主に3種類あります。

①ALC床

ALCとは「Autoclaved Light weight Concrete」の略で、軽量気泡コンクリートと呼ばれる気泡の多くて軽いコンクリートで作られる版のことです。軽量で、耐火性が高く、強度もあり、遮音性も高いとても優れた建築材料です。

このALCを鉄骨の上に敷くことで床を作ることができます。鉄骨に取り付けた金物で固定し、隙間はモルタルで埋めます。

あなたがALCについてさらに詳しく知りたい場合は、ALC協会のHPでわかりやすく解説されていますのでおすすめです。

②デッキプレート床

デッキプレートとは、鋼板を波形に折り曲げて強度を高めた床を作るための建築材料です。デッキプレートを鉄骨上に置き、鉄骨と溶接固定した上で、補強用の鉄筋を敷き、コンクリートを流し込むことで床を作り上げます。

ALC床と比べて、床に振動が伝わりにくいメリットがありますが、コンクリートの打設が必要なので工期は長くなります。

③グレーチング床

グレーチングとは、金属でできた格子状の床材です。道路の側溝に格子状の金属蓋があるのを見たことあると思いますが、あれがグレーチングです。発電所などのプラントで多く使用されています。

鉄骨上にグレーチングを置き、直接鉄骨と溶接したり、金物で固定するだけで施工は完了します。

ALCやデッキプレートと比べて軽量かつ施工が簡単なため、短期間で床を作り上げることが出来ます。さらにグレーチングは、格子状になっているので上部から光が入りやすく、建物内部が比較的明るくなるメリットがあります。

一方で、振動は伝わりやすく、隙間から水や小物が落ちるなどのデメリットもあります。

最近は、ヒルティというリヒテンシュタイン公国に本社があるメーカーのS-BTという製品でグレーチングを簡単に固定する方法を採用するプラントが増えています。

 

S造の壁構造

S造(鉄骨造)の壁構造は主にALC壁とECP壁の2種類あります。

①ALC壁

S造(鉄骨造)の床構造で紹介した、ALCは壁にも使うことが出来ます。

鉄骨に金物を取付、ALCの上下でボルト固定します。ALCの固定方法はロッキング構法と呼ばれ、金物部分に遊び(隙間)があるため、地震や強風にも壊れにくい構造となっています。

②ECP壁

ECPとは「Extruded Cement Panel」の略で、押出成形セメント板と呼ばれる中空構造のセメントで作られる版のことです。

ALCより断熱性は低く、重い(比重が大きい)ですが、表面が綺麗でデザイン性が高いものが多く、タイルなどを貼り付けることも可能です。また、防水性もあり、ALCのように表面に防水塗装を施す必要がありません。また、中空構造のため、ALCより遮音性は高くなります。

ECPについてさらに詳しく知りたい人は、ECP協会が発行している「これだけは知っておきたいECPの魅力と基本」がおすすめです。HPでPDFを無料で読め、基本と言いつつかなり専門的な話まで解説してくれています。

 

以上説明したALCとECPの特徴をまとめると以下の通りです。

 

S造とは?の解説まとめ

最後まで読んで頂きありがとうございます。

S造(鉄骨造)について説明したことを最後にまとめておきます。

S造とは?まとめ
  • 建築構造は、W造(木造)、S造(鉄骨造)RC造(鉄筋コンクリート造)SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)の4種類ある
  • S造の3つの特徴

①大きな建造物に最適・・・鉄はコンクリートの1/20の重量で必要な強度を満たし、建物全体の重量を下げることが重要です。

②短期間で建設でき、コスパがいい・・・使用する材料がRC造より少なく、現地での組立が簡単で工事費を抑えやすいからです。

③火と水に弱い・・・鉄(鋼)は、500℃で強度が半分になり、水に濡れると腐食して(錆びて)強度が下がる

  • S造の床構造は、①ALC床、②デッキプレート床、③グレーチング床の3種類ある
  • S造の壁構造は、①ALC壁、②ECP壁の2種類ある。
  • ALCとECPの特徴をまとめると下表の通り。

S造(鉄骨造)について、より詳しく学びたい人は、この本がおすすめです。イラストが多く、本のタイトルどおり知識ゼロからでも理解出来る良書です。

機械系の私が、鉄骨について知るために一番最初におすすめされて読んだ本です!

この記事が少しでもあなたの参考になれれば嬉しいです。

それでは、ぐっどらっく!

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