この記事は、車の軸などの設計に必須のねじり応力の強度確認方法について説明します。
軸の設計では、
- 軸の強度:ねじり応力が軸の許容応力以下
- 軸の剛性:軸のねじれが許容ねじり角度以下
の2点に着目し、検討しましょう!
1.ねじり応力の強度確認

軸などの部材に、回転する力(トルク)が作用する場合、部材にはねじり応力が発生します。
ねじり応力は、引張・圧縮応力のように同一断面で均一ではなく、中心からの距離に比例して大きくなります。
分布イメージはこんな感じです。↓↓↓

ねじり応力が半径に比例したせん断応力とわかりましたね。
次に、ねじり応力の計算方法を確認しましょう。

上の式を用いてねじり応力が算出できます。ねじり応力は中心からの距離に比例して大きくなる=円周上で最大値となり、最大ねじり応力と呼びます。
この最大ねじり応力が、材料の許容ねじり応力(=許容せん断応力)以下となれば強度上問題ないといえます。
許容応力の考え方、実際の算出方法例は以下の記事でご紹介しています。
また、ねじり応力を算出する式中に登場する、見慣れない変数Ip,Zpはそれぞれ、断面二次極モーメント、極断面係数と呼び、断面形状によって決定する値です。
中実の円柱と、中空のパイプで算出方法が異なります。
名前だけ聞くと難しそうですが、実務上は下の公式を使えばすぐに計算できます。

以上がねじり応力の算出方法と強度確認方法です。
公式の算出は難しい(面倒)ですが、実務で使用する分には公式を正しく扱えば十分です。
- ねじり応力は中心からの距離に比例し増加し、円周上で最大となる
- ねじり応力の算出は以下の公式を使う!
- ねじり応力はせん断応力なので、最大ねじり応力<許容せん断応力となるか確認
- 断面二次極モーメント、極断面係数は公式かららくらく計算しよう
2.ねじり剛性の確認

軸の設計では、部材が強度的に問題ないかを確認すると同時に、ねじりによる変位量が実用上問題ないかを確認する必要があります。
例えば、自動車のハンドル。右に回したときに、軸がねじれて少し遅れてタイヤが動くと困りますよね。
このように、何か動力を伝える場合に、ねじりが大きくなると実用上問題が発生します。そのため、設計する機器によって、適切な許容ねじり角を設定することが重要です。
許容ねじり角の目安としては、1mにつき0.25°が目安と言われています。(機械設計製図便欄より)
実用上は機器の使用方法によって適切に選定しましょう。
具体的な計算は下記の式を使用したらOKです。

ちなみに、横弾性係数とはせん断応力によるひずみ易さを表す係数です。一方、縦弾性係数は垂直応力(引張応力、圧縮応力)によるひずみ易さを表す係数です。(以下のイメージ)

ここまで説明したねじりの剛性に関するまとめは以下のとおり。
- ねじり応力が作用するときの材料のねじれをねじり角と呼ぶ
- ねじり角が大きいと実用上の不都合が生じるため、許容値(許容ねじり角)以下とすることが必須
- 許容ねじり角目安:0.25°/m
- ねじり角の算出は以下の公式を使う!
- 横弾性係数はせん断応力によるひずみ易さを示す係数
3.ねじり応力の強度設計まとめ
1.軸のねじり応力を確認
-
- ねじり応力は中心からの距離に比例し増加し、円周上で最大となる
- ねじり応力の算出は以下の公式を使う!
- ねじり応力はせん断応力なので、最大ねじり応力<許容せん断応力となるか確認
- 断面二次極モーメント、極断面係数は公式かららくらく計算しよう
2.軸のねじり剛性を確認
- ねじり応力が作用するときの材料のねじれをねじり角と呼ぶ
- ねじり角が大きいと実用上の不都合が生じるため、許容値(許容ねじり角)以下とすることが必須
- 許容ねじり角目安:0.25°/m
- ねじり角の算出は以下の公式を使う!
- 横弾性係数はせん断応力によるひずみ易さを示す係数
今回は、軸の設計に必須のねじり応力に対する設計方法について説明しました。いかがでしたでしょうか。ねじりと言うと取っ掛かりにくいイメージがありますが、使う公式がわかればそこまで難しいものではないかと思います。(式の導出は面倒ですが)
是非、参考にしてみてください。
また、各種公式や許容ねじり角は機械設計製図便覧を参考にしています。機械設計者としては、手元に1冊は置いておくと便利なのでまだ持っていない人はこの機会に買ってみてはいかがでしょうか。
ねじり以外の設計方法もまとめているので、以下も参考にしてみてください。
ねじり応力の強度確認をすることができるようになる!